異形の美

明日海りおさんの 春の雪
気分が悪くなるような話です。それは原作のせいでしょう。しかし、どういうわけか気分悪い言いながら、画面にグイグイのめり込んでいったのでした。それも原作のせいでしょう。
そして原作の異様な精神世界に完璧にシンクロする、明日海りおさんの存在も決して小さくはなかったでしょう。
精神あるいは肉体の何処かに不自由を抱え込んだ人間の心を、容赦なくエグり出し、それを特異な美の世界へと強引に結びつけてしまう原作者の剛腕に応えられる舞台人は、明日海りおさんくらいなものでしょう。
ポーの一族」のエドガー役は明日海りおさんが唯一無二、との見立ては決して的外れではなかったと証明したのが、明日海りおさんの清顕役だったのです。
病的で内面に狂気を宿した、恐ろしい程の美形男子を演じられるのは、明日海りおさんしかおりません。
そういったわけで「春の海」は、明日海りおさんだけを見る為の舞台でありました。

スカステが余生の友