舞姫が聞いた時計の音

音羽麗さんの 舞姫
明治維新直後の日本が、列強の背中を追いかけツンノメルように疾走していた時、時代に翻弄されるエリートの悲哀を、女性の視線で見詰めているような演出でありました。
舞姫のエリス、貧困に喘ぐ画家の恋人マリィ、そして豊太郎の母と妹が一本の軸となり回転し、その周囲を男達が遠心力で弾き飛ばされないようにしがみついているかのようです。
やがてその軸は分裂し、消え去ったり、回転を止めたり、あるいは変調を来したりして、男達は各々の方向へ消えて行くのです。
日独両国の歯車となった者達の軋み音が、エリスが悩まされ続けた時計の音だったのかもしれません。

スカステが余生の友