江戸情緒は何処へ?川霧の橋

月城かなとさんの 川霧の橋
剣幸さん版「川霧の橋」は、剣幸さんの美しい姿と江戸情緒溢れるタカラヅカさんの世界が魅力的でありました。
剣幸さん版に充満していた江戸情緒が、月城かなとさん版では、何処へ?状態でした。
端的な例は江戸弁であります。色街の姐さんや職人が話す下町の気っ風のいい粋な言い回しが、残念な状態になっていました。脚本の字面をなぞっているだけの、血の通わない江戸言葉でありました。
でも、それは致し方のないことなのです。江戸弁を実生活で経験したことのない世代の演出家では、いなせな下町風情を解せないのも無理はありません。
江戸弁から粋な空気が失われれば、それは江戸情緒の消失を意味します。
時代の移ろいと共に消えゆくものは、二度と取り戻すことは出来ません。
令和に「川霧の橋」を再演しても、剣幸さん版の味わい深さは、もう再現出来ないでしょう。
令和の川霧の橋には、息づく江戸の町が雲散霧消していたのでした。

スカステが余生の友