江戸のバウ・ミュージカル、キマったぜ

彩吹真央さんの 月の燈影
見逃していた作品の中に、こんな名作があろうとは迂闊でありました。稚拙な選球眼でありました。タカラヅカさんを甘く見ておりました。
冒頭、佐内役の方が学芸会芝居丸出しでありまして、おやまぁ、とスッカリ油断してしまったのでした。
ねずみ小僧治郎吉の物語と思わせておいて、注文通りに治郎吉さんが登場して参りましたので、そらきた分かりやすいねぇ、と更に油断が重なってしまったのです。
蘭寿とむさん演じる治郎吉さんが、なんだかんだでねずみ小僧になるお話ねと、まさに下衆の勘繰りであります。
終盤、サッちゃんが半グレの総長的存在の淀辰に反旗を翻し、巨大な死亡フラグが立つに及んでは、兄ィと慕うサッちゃんの弔い合戦として、治郎吉さんが盗人となり淀辰に復讐するのだな、とこの期に及んでもまだ油断の合わせ技は続いたのです。
しかし、マサカの展開で、へっ?何で?、であります。ソッチかい、であります。ダマされた、であります。
これは完璧に作家さんの勝利です。
人情噺もウマいねぇ、であります。火消しのカシラ役、一樹千尋さんの粋な江戸弁も見事でありました。
江戸の町、大川のアチラとコチラの暗黒街を、行きつ戻りつするハードボイルド・テイスト。ハードにキメつつも情に脆いとは、サスガ分かってらっしゃる。ハードボイルドのヒーローはこうでなくちゃ。
セリフもウマいし構成もウマい。言うことなし。
今回はタカラヅカさんと作・演出の先生に兜を脱ぐのであります。

スカステが余生の友