怪俳優の怪演技

博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」(1964年 英米)を視聴。かなりアイロニカルな感覚に満ちたコメディ映画であります。この映画で暗示されている事柄について述べる野暮は、避けることにします。一人三役で、それぞれタイプの異なるエキセントリックな役柄を演じ分ける、ピーター・セラーズの演技に圧倒されるわけであります。日本でピーター・セラーズに匹敵する役者さんといえば、コワ過ぎる顔が難ではありますが、遠藤憲一くらいしか思い浮かびません。宝塚歌劇団では壊滅的におりませんな。退団されてしまいましたが、月城かなとさんなら、ウィッティーな役柄も見事に演じ切ってみせてくれたと、勝手に思っております。端正な二枚目だからこそ、トボケた味が際立つというわけです。現在星組さんで公演中のコメディは、どうせスラップスティックものでしょうから、そんなことを言ってるのではないわけです。生真面目な表情を保ちながら、そこはかとなくムズムズとおかしさが湧き上がってくるような怪演技が求められる、そうした難易度マックスに適応出来たのは、月城かなとさんだと思うわけです。度量の狭い宝塚歌劇団では、無理だったでしょうが。