音楽と芝居が完璧に合致した作品

上海バンスキング1984年の映画版を視聴。私は、自由劇場による「上海バンスキング」をNHKが放送した際、VHSのテープに録って、それこそテープがスリ切れる程、何回も視聴したのでした。それ程、この作品に感激したということであります。自由劇場版でマドンナ役を演じた吉田日出子が、映画版「上海バンスキング」の感想を聞かれると「作品が可哀想」という表現で、暗に映画版を批判していたのを何かで読んだ記憶があります。吉田日出子が言うのだから、間違いはなかろう、ということで、今日まで映画版「上海バンスキング」は視聴していなかったのであります。それに映画版は、「蒲田行進曲」の二匹目の泥鰌を狙った計算が見え透くようで、何かイヤだなと思ってしまったというのも、映画版「上海バンスキング」を遠ざけてしまった理由であったりします。というわけでケチつける気マンマンで視聴を始めたのですが、豈図らんや、画面にグイッと引き込まれてしまいました。マドンナ役、松坂慶子のイロっぽいサービスカットは、今回はナシ。そんな小賢しいことしなくても、作品の面白さだけで勝負だ、みたいな意気込みが感じられるわけです。白井中尉とマドンナが別れる場面で、白井中尉の所望に応えてマドンナが「暗い日曜日」を歌うのですが、死出の旅路を覚悟する白井中尉と、それを慮るマドンナの哀しい歌声に、涙が溢れるわけです。「銀ちゃんの恋」は出来ても、タカラヅカさんには「上海バンスキング」は難しくて出来なかったようであります。