呪術師ウェイン・ショーターの終焉

ウェイン・ショーターは、常にモダンジャズ界のメインストリームを闊歩してきたと言えます。ジャズメッセンジャーズ、マイルス・デイビスクインテット、ウェザーリポート、V.S.O.Pなど目も眩む程の高い地点を歩み続けてきました。そんな輝かしい遍歴のジャズ・サックス奏者なのですが、何故かジョン・コルトレーンソニー・ロリンズの次みたいな印象が、勝手ながら私にはあります。ジョン・コルトレーンソニー・ロリンズは、あくまでもサックス奏者として自己を表現し切っているように思われるのです。対してウェイン・ショーターはサックスの演奏家としての側面と同等の重要さで、作曲家、編曲家として、つまりトータルの音楽家として存在していると言えるのではないかと思われます。極端なことを言えばジョン・コルトレーンソニー・ロリンズが楽器を失えば存在感は限りなくゼロになりかねませんが、ウェイン・ショーターの場合は楽器を捨てても、スコアを書き、楽器をタクトに持ち替えることで、十分ウェイン・ショーターの音楽を奏でることが可能だと思えるのです。ジョン・コルトレーンソニー・ロリンズは、演奏一本で食っていくという潔さで勝負しているのに対し、ウェイン・ショーターはあれも出来ますこれも出来ます、音楽性も幅が広いですという多彩さがかえって災いし、器用貧乏的な印象になっているように私には感じられるのです。そんなウェイン・ショーターが3月2日に亡くなりました。彼を偲んで ウェイン・ショーターを聴きまくろうと思います。