フルトンの要塞

結果だけ分かればいい、と思っていたのですがツイ見てしまいました。井上尚弥vsスティーブン・フルトンの世界スーパーバンタム級タイトルマッチです。フルトンは井上より上背とリーチで上回っているのですが、両者が相対した時、体格差を感じませんでした。それはフルトンが両足のスタンスをかなり広く取っていたので、眼の高さが両者ほぼ同じだったからです。フルトンとしては足を広げ、頭の高さを揃えることによって、リーチ差のアドバンテージを最大限に活かそうという目論見があったものと思われます。しかし、それに対し井上はフルトンの前足にクロスさせるように、自分の足を踏み込み、圧をかけてきたのです。フルトンにしてみれば「そんなことされると、距離取れないよ」と感じたかどうか分かりませんが、2Rに井上の足を踏みつけてしまう行為に及んだのは、焦りの表れと見ていいでしょう。ジャブの刺し合いでは、井上はフルトンのジャブをヘッドスリップで交わし、間髪を入れず右クロスを狙っていました。フルトンは井上のジャブをスウェーで避けていました。スウェーだと重心が後ろ足にかかってしまう為、重心を元に戻す分反撃が遅れるのです。井上がこの隙を見逃す筈はなく、更に踏み込んで追撃し攻勢を強めるわけです。こうして序盤は井上が主導権を握ります。フルトンはこの劣勢に傾いた展開を打開せんと、前に出て反撃に打って出ました。このフルトンの圧を井上は、ボディージャブでストップします。井上はフルトン以上にスタンスを広げ、伸ばした足がそのまま踏み込む形となり、と同時に体重とスピードに乗ったボディージャブが腹にメリ込むのですから、フルトンもたまったものではありません。序盤はディフェンス重視だった為、井上のボディージャブをバックステップやサイドステップで避けていたのですが、攻勢に出た中盤は、井上のボディージャブをモロに食ってしまい、金属疲労が蓄積していったのでした。そして迎えた8R、井上の無慈悲なボディージャブに前屈みになった刹那、右ストレートをアゴに被弾し、難攻不落といわれたフルトン城は陥落したのです。