恐怖のローション地獄

BS松竹東急で1992年の映画版「女殺油地獄」を見ました。これは本来、放蕩ドラ息子の与兵衛が強盗殺人を犯すまで堕ちていく物語でありますが、五社英雄監督は殺されるお吉にスポットを当てた作品にしました。というより、樋口可南子を撮りたいが為の作品かと思う程、樋口可南子にフォーカスされておりました。与兵衛にとっては世話役のような母親的存在から、愛人のようなオンナに変貌していく悪魔的変体を、これはまさに樋口可南子だからこそ、という演出で描いておりました。BS松竹東急では片岡仁左衛門シネマ歌舞伎版「女殺油地獄」も放送してくれまして、見比べる楽しさが増したわけです。シネマ歌舞伎版の方は、与兵衛の心の動きに重心が置かれ、殺人に至る動機も分かり易くなっていました。シネマ歌舞伎版のお吉は完全に被害者ですが、樋口可南子版は殺されたお吉もワルよのう~、でありました。