成瀬巳喜男監督の「あにいもうと」(1953年)を視聴。高峰秀子が出ないのだから、ちょっとな、とは思ったけれど、成瀬巳喜男監督のお眼鏡に適う女優さんは誰か?という興味での視聴と相成ったわけであります。それが京マチ子なのは明らかでありますが、如何にも欧米的な美形であり、東南アジアか何処かの大統領に囲われてでもいそうな派手な顔立ちが成瀬巳喜男監督的ではない、と勝手に決め付けてしまったわけです。思った通り成瀬巳喜男監督の舞台装置に横たわる京マチ子は、浮いているように見えたのであります。とは言うものの、着物姿に日傘さして田舎道をしゃなりしゃなり歩く様は、まさにクール・ストラッティン!たまにはソニー・クラークでも聴いてみようか、という気にもなったりします。否、京マチ子が歩く姿に合うBGMは、マイルス・デイビスの「死刑台のエレベーター」かもしれません。否!待てヨ。映画「死刑台のエレベーター」は成瀬巳喜男監督の「あにいもうと」から5年後の作品。ルイ・マル監督は、アイスキャンディーを噛りながら歩く京マチ子にインスパイヤーされて、シャンゼリゼを歩くジャンヌ・モローを撮ろうと思ったのに違いあるまい、と妄想してしまうわけです。貧乏臭いアバラ家的映像世界に京マチ子は浮いて見えたのですが、それは京マチ子のモダンな姿を際立たせる為に成瀬巳喜男監督が仕組んだ策略だったのかもしれません。