伊織直加さんのエクボの窪みで見えたもの

伊織直加さんの Endless Love
初風緑さんの2作品がステキでしたので、期待値は高かったのであります。しかし、近頃はタカラヅカさんもそんな私を嘲笑うかの如く、肩透かしを食らわしてきます。意地の悪いタカラヅカさんであります。
英国植民地支配からの解放と自由を叫ぶインド人の歌がフィーチャーされ、今回も冒頭からいやーな予感がしたのです。
登場人物が時代の波に翻弄されるのは、物語としてはありなのですが、政治的色彩の濃いスローガンがドーンと出てくると、引きます。
しかし、政治的なものはそれ程のことはなく、むしろ輪廻転生という霊的苦悩の果ての悲劇に物語は展開し、それはそれで何だかなぁ、であります。
第一幕の終わりに命を落としたバシームへの贖罪なのか、実の息子を忌避するジューンの苦悩を描くにしても、最終的には何らかの救いが無いと、消化不良な感覚を残したまま終わってしまったという感じです。
エデンの東」のキャルも継子扱いされていると思い込み、底無し沼に沈んだかに見えましたが、最後の最後に希望の兆しが見えてきて物語は終わったではありませんか。
悲劇の中にも希望を予感させるような物語を見せて欲しいと、タカラヅカさんの中の作家さんにはお願いしたいと思います。
最後に、伊織直加さん、水夏希さん、蘭寿とむさんのお三方は素晴らしい。暗い物語の中に見えた、灯火のような存在でありました。

スカステが余生の友