120周年記念

小津安二郎の生誕120年記念ということで、BSやCS等で小津安二郎の映画が放送されております。私は小津安二郎の映画は「これは見ないでいい映画」と決め付け、忌避していたのです。端的に言えばキライであります。昔は映画を活動写真といったようですが、小津安二郎の映画は、活動しない写真と言った方が良いくらいに動きが無いではありませんか。紙芝居みたいではありませんか。セリフを言う役者さんが決まったようにカメラ目線なのも、気持ち悪いではありませんか。これではキライになっちゃうのも、仕方ないではありませんか。ところが小津安二郎の映画を見てみようかしらん、などと思ってしまうキッカケがあったのです。BS松竹東急で放送された、劇団新派の舞台であります。小津安二郎の映画を舞台化したものが放送され、それを視聴したのです。劇団新派の大看板である水谷八重子波乃久里子の重厚な人間力に、惹き付けられました。役者は演技を見せるのではなく、人間を見せるのだと言っているようであります。水谷八重子波乃久里子のような大人の役者さんに比べると、ムラの芝居はお遊戯会のようであります。そんな人間の達人たる劇団新派の面々が上演する演目が、人間を深く洞察する小津安二郎の世界だったのです。劇団新派小津安二郎世界に踏み込み、その真価に触れたような気になった私は、これは小津安二郎の映画に対峙せねばなるまい、と覚悟を決めたのであります。前置きはこれくらいにして、いよいよ小津安二郎の映画について述べようと思いますが、話しが長くなりましたので、きょうはこれくらいにして、続きは次回に持ち越しといたしましょう。